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スーパーボンドクイックの開発にかかわって

    スーパーボンドクイックの開発にかかわって
             
( クイック液は歯根端切除術のために開発されたものです )立川病院歯科口腔外科 笠崎安則
<はじめに> 
スーパーボンド(以下SB)は東京医科歯科大学医用器材研究所で増原英一教授によって研究開発され、サンメディカル社から1971年製造発売されてから40年以上がたった。当初は歯列矯正用金属ブラケットを歯に接着するのに用いられたが、その接着力の強さから、動揺歯の固定や修復物の合着、さらには金属やポーセレンの接着に用いられ、その信頼性は高く現在では世界中で使用されている。しかしながらSBの良さは分かっても、操作性が悪く面倒だという指摘も出されていた。粉と液を混合してから急激に糸引き状態になって流れが悪くなったり、完全硬化までに時間がかかるなどの点である。そこでこの欠点を改良したスーパーボンド・クイック液(以下SBクイック液)が発売された。この製品化には私が関係したので、その経過を述べてみたい。
<スーパーボンドクイック液の開発>
自分で言うのも変だが、SBクイック液の開発は、私の歯根端切除術の成功への熱い想いから始まった。私は1992年から歯根端切除術の逆根管充填材にSBを応用してきた。逆根管充填材としてはアマルガム、アイオノマー、光重合レジン、EBAセメント、MTAセメントなどが挙げられるが、長期予後観察してみると臨床症状や根尖部の透過像の消失、歯槽硬線の出現など、SB応用例がはるかに優れていた。また適応症は他に比べ非常に広く、再発例や難治症例、たとえ金属コアが切断面に出ていて逆根管形成困難症例でも対応可能で成功率は高い。
 しかしながら、その操作性の悪さと完全硬化まで20~25分間かかることから、容易に逆根管充填材に応用できるということではなかった。そこでメーカーであるサンメディカル社に連絡をとり、研究者に相談を持ちかけた。通常の合着セメントと同じように、混和直後の操作時はクリーミーで、4~5分後には急激にシャープに硬化、7~8分後には完全硬化するSBはできないかと相談した。「今までそのような提案を受けたことはなく、何に用いるのですか」と問われたので、SBを逆根管充填材に応用した歯根端切除術のX線写真や症例写真を見せ、予後が良いことを説明した。しかしSBの完全硬化まで手術を15~20分間中断しなければならないことも話した。
 最初は話に耳を傾けてくれなかったが、私が熱心にその優越性を訴えるもので、「じゃー何とかやってみましょう」とのこと。その3か月後、研究者のSさんから試薬モノマー液が郵送されてきた。使用法は従来のモノマー液の代わりに試液モノマー液を使うだけで、硬化反応の終了間近で急激にシャープに硬化に向かい、硬化時間は従来の約半分という要望通りのものであった。さっそく逆根管充填材に応用してみたところ、操作性は良くなり手術時間は短縮した。
 そしてこのSBクイックを、外傷や歯周病による動揺歯の固定に試用してみると非常に使い易かった。これは逆根管充填材だけに用いるのではなく、用途は広がると思うので製品化したらどうかともちかけた。(実際は試薬で終わったのでは製品でないので歯根端切除術への応用が続かず困るので。)そして会社の営業会議にかけられ、1年後には「スーパーボンドクイック」という商品名で売り出されることとなった。そして2003年秋のデンタルショーには青と白の新しいパッケージになったSBクイックが山積みされていた。
<スーパーボンドクイックの理工学的性質>
SBクイック液(クイックモノマー液)は、モノマー液にわずかな硬化促進成分を添加することで、従来モノマー液の接着性、柔軟性を損なうことなく、装着後の硬化時間を大幅に短縮したことを特徴としている。これにより、十分な混和操作時間とシャープな硬化特性を持ち合わせた操作性に優れたSBが誕生した。
<スーパーボンドクイックの臨床応用>
硬化時間が短縮し操作性が即時重合レジンに近づいたSBは、より多用途に使いやすくなった。最も威力を発揮し便利になったのは、歯周病による動揺歯や外傷による脱臼歯の固定である。従来は硬化が遅いため、硬化するまで歯が動かないように長く指で押さえておかねばならなかったが、その面倒さがなくなった。固定法は、まず歯の隣接面をダイヤモンドストリップスで軽く削去した後、エッチングして水洗・乾燥、クリアポリマー粉末とクイックモノマー液を筆者み法で混和して盛ってゆく。脱白歯においては、指で正常位置にもどして硬化するまで保持する。この時、従来のSBと比較してクイックモノマー液を使用した場合の、硬化時間の違いと操作性の良さに驚くことでしょう。
 歯冠の破折や修復物の破損、矯正ブラケットの接着などの使用も便利になった。また歯根破折を生じさせないためにコア合着は柔軟性のあるSBを使用する臨床医が増えているが、この場合にもクイックモノマー液を応用すれば同日に形成できる。
 最近では優れた組織親和性の点から、歯根破折の接着や歯根穿孔部の閉鎖、露髄部に直接歯髄覆罩材として応用されている。歯根の縦破折に対しては、一度抜歯して口腔外で急速に接着させ後に意図的再植することも可能となった。穿孔や露髄に対しては出血との戦いであり、硬化が速くなったことでより成功へ近づくと思われる。
 また歯根端切除術の逆根管充填材としての応用はもとより、副根管や亀裂の封鎖もできるようになり、今まで抜歯せざるを得なかった歯も保存の可能性がでてきた。ちなみにスーパーボンドC&Bセットを持っている先生は、クイックモノマー液のみを購入すればすみます。
<おわりに>
このようにSBクイックは歯根端切除術の逆根管充填材として開発・製品化されたが、硬化時間が短縮されたことにより、便利性や操作性が高まり用途を広めることとなった。たった一本のメーカーヘの電話から話が始まり、メーカーがそれに応えてくれた事が、使い勝手の良いこの製品を生むこととなり、患者さんへより良い歯科治療を提供できることとなった。感謝。なおGoogle、Yahooで「歯根端切除術」と検索すると、上位に筆者のHP「歯根端切除術の相談コーナー」が載っているので目を通して頂けると幸いです。2012.1

<追加、後日談>
人生長いといろいろなめぐり合いがあります。このスーパーボンドクイックを開発作成してくれたサンメディカル社の研究者Sさんが、ある日、筆者が勤務する立川病院歯科口腔外科を受診された。開業歯科で右上3番の根管治療を約3か月間行っているが歯茎の腫れと痛みが引かず抜歯を提案され困っているとのこと。レントゲンを見ると大きい根尖病変を認め、電気根管長測定器で検査すると根尖から2mmのところで大きく根管穿孔があり、根管治療では治癒しない症例でした。この抜歯適応であった歯に筆者が歯根端切除術を行い、Sさんが作ったスーパーボンドクイックを使って逆根管充填を行った。1か月後には症状消失、2年後のレントゲンで根尖病変は消失し完治していた。Sさんは自分で開発作成したスーパーボンドクイックのおかげで、廻り回って抜歯が避けられ自分の歯を助けることとなった。当時企業の利益には関係ないのに、Sさんと会社は私の提案によく乗ってくれたと思う。
 変な話だが、Sさんの右上3番歯が自分の将来に起こるであろう不幸を予測し、抜歯されないように運命としてSさんを突き動かしクイック液を開発させたと言えなくはない(笑)。人の、物のつながりの妙を感じるものです。クイック液がなければこんなに適応症が広く成功率の高い歯根端切除術は広まらなかったと思う。私の人生の中でも、あの人との出会いから、あの物との出会いから、急に流れが良い方に変わったという経験が何度かある。それは、無欲、真摯、懸命、一途、楽しい、駄目元、足を使い人に会う、チャレンジがキーワードだろうか。それは、欲、邪悪、金、権威、名声、の心があれば繋がりを邪魔して遠ざけるようだ。ちょっと話がブログ調になってしまった(笑)。2018.現在、スーパーボンド製造の2/3はクイック液になっていて広く発売されていると聞き嬉しい限りです。
 追:2019.暮れに、スーパーボンドの臨床応用で貢献された真坂信夫先生がご逝去されました。私の歯根端切除術の成功はスーパーボンド応用の上で成り立っています。前述の増原英一教授や真坂先生はじめ多くの研究者のお陰で、この製品が世に出ました。真坂先生には何度かお話をさせていただき応援して頂いたこと、あらためて感謝ご冥福をお祈り申し上げます。2020.1.4.

●スーパーボンドはいかにして開発され製品化したのか?
【モリタ】新世代のNewスーパーボンドの特長と臨床応用

・スーパーボンド 使いこなしガイド  スーパーボンドの特性
 
https://www.sunmedical.co.jp/support/catalog/pdf/guidebook.pdf

●スーパーボンドの特性
技術資料 | 技術資料 目次 | スーパーボンド | 製品情報 - サンメディカル株式会社

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<スーパーポンドはアメリカではメタボンドという商品です>
早速ですが、アメリカでのスーパーボンドは以下の名称となっております。
製品名:C&B Metabondレジスタードマーク Quick Adhesive Cement System  
構成品:
Catalyst V
Quick Monomer
L-Type Clear Powder(海外仕様)
L-Type Radiopaque Powder(海外仕様)
エッチング材はボトル入りの高粘度グリーンとレッドです。
付属品は、陶器のダッペンディッシュ、ブラシ(海外仕様)になります。

ポリマー粉末は全てL-Typeというもので、国内仕様(ポリマー粉末クリア、ポリマー粉末ラジオペーク)に比較してやや筆積しにくい傾向にありますが、性能は同等とお考えいただいて結構です。

購入はニューヨークにあるParkell社のウェブサイトからできます。
また、Toll-FreeやHenry Scheinでも扱っているようです。
参考として、Parkell社のリンク先を添付させていただきます。
https://www.prestigedentalproducts.com/Parkell/
以上が回答になります。
サンメディカル㈱ 学術部

<接着性根管充填材が発売されました> 

メタシールSoftペースト の開発にかかわって  
2020.7.新商品、接着性根管充填材「メタシールSoftペースト」がサンメディカル社から発売された。この製品開発に笠崎が少し関係しているので述べてみたい。約6年前に歯根亀裂防止ために提案してきたが、また筆者だけでなく多くの臨床歯科医がが提案していたと思うが、やっと製品化され嬉しい限りです。
筆者は難治性の根尖病変に対して、数多くの歯根端切除術を行ってきた。ここで注目したいのは、根管治療の不良の原因である。何とかならないかと40年前から思い言ってきた。私が思っている従来の根管充填での問題点は以下です。
1.根管充填材の劣化・腐敗
根管充填材について。セメント材の多くは酸化亜鉛セメントだが、歯根端切除術での切断面を見ると、ボソボソでグレーや黒くなって腐敗していることも多い。また空隙があって緊密な根管充填がされてないことも多い。
切断面の根管が感染源となっていることである。またマイクロリーケッジが根尖病変の再発原因にされたりしていた。(この接着性根管充填材のお蔭でマイクロリーケッジ問題は解決した)。この原因は、根管充填材自体がボソボソしていている、接着性がない、流れが悪く根管内に空気が残ってしまうこと。液状の物を注入が良い。

2.亀裂について
筆者は歯根端切除術を年間200例以上行っているが、困っているのが歯根亀裂である。根管治療や歯根端切除術の適応とならず、行ったとしても再発して抜歯となる原因が歯根亀裂である。歯科治療で厄介なのが亀裂で、亀裂が起きてからの治療を考えるのではなく、亀裂を越こさせないことの方が重要である。亀裂防止の最優先は充填材と根管象牙質との接着である。従来の接着性のない根管充填材では亀裂の予防とはならない。さらには充填材の象牙質と同程度の弾性があるとなお良い。こうして歯根歯質と根管空洞が一体化した状態を作り出すことが亀裂を防ぐ一助になると思う。

3.操作性の悪さ
従来は根管充填ペースト
セメントを根管に流し込み、何本ものガッタパーチャポイントをぎゅうぎゅうに詰めて加圧し、空気空洞を少なくし、側枝空洞を埋めるとされている。この操作性の悪さは必要なものなのか、この操作がないと根管充填後の経過は不良なのか。この空洞をなくす目的は酸化亜鉛セメントを使っているためで、流動性が良く空洞が生じにくい接着性の充填セメントが望まれた。

私の意見としては、根管象牙質との接着性のある流動性の良い根管充填材の開発である。そして操作性が良好なことである。まず亀裂を予防するためには接着性のある根管充填材が必須である。次いで硬化した後は象牙質と同程度の曲げ強度が望ましい。またコアと接着性があればさらに良い。従来の酸化亜鉛成分のキャナルスやアパタイト系、シリコン系は象牙質接着性なく、亀裂に対して有効ではなかった。スーパーボンド系根管充填材はあるが、エッチングやキャタリストを入れるなど操作性が悪く普及しなかった。

​メタシール
Softペーストは画期的な新しい根管充填材である。大きい特徴は、流動性が良く根管象牙質接着性があることで、充填空隙をなくして根管感染やマイクロリーケッジを防止し、亀裂を防止してくれる。そして操作性良く簡便で加圧充填操作もほぼ必要でなくなった。根管治療の煩雑性を簡素化し、再感染や歯根亀裂を防止し、患者さんの歯を残すために役立つと思います。臨床症例を積み重ねることで、急速に世界中で根管充填材がこれに移行する可能性がある。

「レントゲンで根管充填は適切に見えるが、マイクロリーケッジが起きて根尖病変の再発が起きている可能性がある。だから冠と土台を除去し根管治療をしてから歯根端切除術をしましょう。」と説明するDrがいる。今後はこの説明や治療はなくなるだろう。接着性根管充填材メタシールペーストを使用することで、マイクロリーケッジは起きず無駄な除去や再根管治療は必要なくなると思われる。
 マイクロリーケッジ問題で再根管治療は必要なくなった。この一製品で治療方針が変更され、無駄な勘違いによる再根管治療が避けられることになる。本当はマイクロリーケッジではなく、根管壁象牙質の感染、つまりは酸化亜鉛セメントの腐敗だと私は思っているが、この点でもこの接着性根管充填材で解決すると思う。kasazaki 2020.8.25.記

<亀裂について> 
歯科医師にとって歯根亀裂の治療は厄介である。亀裂は縦に入り起きてしまった場合は、基本的には抜歯とされている。例外として根管内から亀裂に接着材を流したり、再直術で治療することもあるが予後は良くない。
亀裂の関しては、起きてしまった後の治療を考えるのではなく、亀裂防止策を考え実行することが重要である。以下は筆者が考える亀裂防止策である。
1.亀裂を助長させることをやめる。
①根管消毒薬において象牙質の強度を弱くする薬剤は使わない。つまり次亜塩素酸ナトリウム液、水酸化カルシュウム剤、MTAセメントなどの強酸性や強アルカリ性の薬液の使用禁止である。代わりに塩化ベンザルコニウム剤などの消毒剤を使う。
②根管形成において歯質を削り過ぎないこと。大きくロート状に形成するのはやめる。
2.根管充填材は象牙質接着性充填材を使用すること。今回、接着性根管充填材としてメタシールSoftペーストが発売されたが、これによって亀裂は少しは減少することでしょう。ただしこの製品は亀裂防止という意味ではまだ未完成であり、亀裂に特化した次世代のメタシールHardペーストが望まれる。Softは再根管治療を考えたため、硬化した後も少し弾力がある除去し易くなっている。除去を考えた製品だからである。
私が望
むのは、亀裂防止を最優先に考えた根管充填が欲しい。その特徴は除去は考えないでいい、接着する、根管充填材が硬化すれば象牙質よりも固く象牙質よりも曲げ強度があり接着性のある充填材が欲しい。

3.根管充填材と接着する一体化した、曲げ強度のあるコア材が欲しい。

つまりこれは歯根膜のある、亀裂が起きない再生
歯根を目指している。2020.9.9.    
 

プロフィール

プロフィール画像
笠崎安則:略歴
愛媛県松山市出身.1976年東京歯科大学卒業.慶応大学病院歯科口腔外科(13年間). 立川病院歯科口腔外科部長(27年間). 慶応大学医学部歯科・口腔外科(非常勤講師). 現在: 国立スマイル歯科,斎藤歯科にて歯根端切除術と再植術に特化した専門治療をしています.
笠崎真悟:略歴
東京都国立市出身.2010年東京歯科大学卒業.慶応大学病院,国立栃木医療センター,日野市立病院,都立多摩北部医療センター歯科口腔外科. 現在:2021.10/1から国立スマイル歯科、歯根端切除術とインプラント、親知らずの専門病院を開設しました.

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