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予後の良い歯根端切除術

 
      予後の良い歯根端切除術  
                             立川病院歯科口腔外科 笠崎安則(2009年記載)   
当科では年間約140例の歯根端切除術を専門的に行っていて、手術成功率は90%以上で良好です。歯根端切除術をネット検索すると予後不良で悩んでいる方が非常に多くいると知り、 治療の上でお役に立てると確信していますので、是非ご相談下さい。
歯根の先に膿の袋ができて、歯茎が腫れたり痛みがある場合、 治療法として根管治療(歯の根管の中の腐った神経や汚れた象牙質を除去し、消毒薬を入れる)を行うことで治癒に向かいます。しかしかぶせた冠や根管のつめものが除去できない、根管が曲がっているなどで根管治療ができなかったり、 予後が不良な場合には歯根の手術をすることで抜歯せずに助けることができます。
この手術は歯根端切除術と言います。歯茎に局所麻酔をしたのち切開し、骨に小さな穴を開けて膿の袋を取り除き、マイクロミラーで原因を究明して、原因である歯根の先端を1.5~2mm切除します。そして超音波ダイヤモンドチップで逆根管充填窩洞を形成した後、安全性の高い接着性セメントを流し込み細菌の繁殖部を閉鎖し、歯茎をもどして縫合します。 必要によって、歯根の亀裂などを確認するために、マイクロスコープを使って手術をする場合もあります。手術時間は約1時間~1時間30分です。
予後について、当科の手術成功率は90%以上で良好です。再発はまれにありますが、その原因は歯根そのものが腐敗している場合や、歯根に亀裂や破折がある場合などです。予後をチェックして抜歯にならないために、手術の1、2、3年後に経過観察のため来院していただきます。病巣の再発がないか、歯根のまわりに正常の骨が再生されているかなどをチェックします。
当科では可能な限り根管治療を優先し、不可能や予後不良の場合にのみ歯根端切除術を行います。しかし歯根端切除術が第一選択となることも多いです。手術した症例を紹介しますが、ほとんどの患者さんはこのように良好な経過をたどります。
  注意 : 一部、手術中の画像がございます。

症例1

女性20才 左上2番の歯痛、歯肉の腫れと痛みは著しい

術中
歯根嚢胞は大きく骨欠損の範囲は広い.
原因は歯根が屈曲していて根管治療が適確に行えなかったためである。根尖を2㎜切除しスーパーボンド・ラジオペークで逆根管充填を行った。
術前 術直後
1年後.根尖病巣は消失し症状は全くない
 2年後.感染の細菌培地をなくす
​ ことで、どんどん骨は再生される。
3年後.病巣部は正常骨で満たされ再発もなく安定している.根尖部には歯槽硬線が出現している。人工骨や人工膜は使っていない。

症例2

女性37才 15年前にブリッジを装着したが2年後に歯肉の腫れや痛みがあり、大学病院口腔外科で右下4番の歯根端切除術を受けるが再発した。

 

 
右下4番の歯肉から膿がでる. 術前.根尖病巣は大きい. 歯根嚢胞を摘出し根尖をミラーで確認するとアマルガムで逆根充されていた.
アマルガムを除去した後、超音波ダイヤモンドチップで窩洞形成し、スーパーボンド・ラジオペークで逆根充した.
   
 術直後  1年後  2年後.根尖病巣は全く消失し、正常な骨が再生して
 いる.歯肉の腫れや排膿はなく経過良好である.

症例3

女性45才 左上1番の歯肉の腫れと排膿、圧痛、打診痛がある.
術前.左上1番の歯肉に
腫脹と排膿.
きれいに根管充填されて  いるように見えるが根尖
病巣が認められる
 術中.根尖1㎜の場所に
 副根管がみつかり、これ
 が原因と思われた.
術直後.根尖を1.5㎜切断し、超音波ダイヤモンドチップで窩洞形成した後、スーパーボンドで逆根充をした.
1年後.歯肉の腫れや痛みは消失している.
1年後.X線写真でも根尖病巣は消失し、※歯槽硬線もみられて経過良好である.

症例4

女性27才 左上2番の歯肉に腫れと痛みがある
術前.左上2番の歯肉に腫脹と痛み.
根管充填はきれいにされているが、根尖病巣は大きい.根管治療不良の原因は何だろう?
歯根嚢胞を摘出し、根尖を1.5㎜切断したのち切断面をマイクロミラーで見たところ、亀裂を認めた.
超音波ダイヤモンドチップで形成し接着性セメント(スーパーボンド・ラジオペーク)を逆根充した
術直後
1年後.根尖病巣は消失し、正常な骨で再生されている.歯槽硬線も出現し経過良好である.
 

考察

根尖病変が生じて歯肉に腫脹や痛みが出現した場合の治療は、適確な根管治療と緊密な根管充填であることは言うまでもありません。この治療によってほとんどの根尖病変が治癒に向かうが、数%の歯においては根管が閉鎖していたり、曲がっていたり、根尖が破壊していて根管治療が行えず、歯を助けるために歯根端切除術が適応となる。
 他医院で歯根端切除術を行い予後不良で来院される患者さんを検討してみると、失敗の原因のほとんどは逆根管充填の不備であることが分かった。逆根充材に求められる条件とは、1)細胞毒性がない、つまり安全であること、2)根管を封鎖するために象牙質との接着性があること、3)経年的に材質が安定していることである。現在、多くの歯科医院や病院歯科口腔外科では逆根管充填材にアマルガムやEBAセメントを用いているが、1)2)の点で劣る。これらの材料では根尖部における異物反応や根管封鎖不良による細菌感染のため炎症が生じ、歯肉の腫脹や疼痛が出現してしまっている。
 1)2)3)の条件を満たすものとして4META/MMA・TBB接着性セメント(スーパーボンド)が挙げられる。この材料は脳外科や整形外科で用いられる骨セメントと同種の物であり、医療用材料として安全なものである。しかしながら手術中の止血処置や硬化時間が長いなど、操作性が悪く歯根端切除術への応用が困難であった。困難ではあるがさまざまな工夫や器具を改良して手術を行い、長期に経過観察することでやっと予後の良い歯根端切除術を完成することができた。当科では1992年から歯根端切除術の逆根管充填材としてこのスーパーボンドを応用し、年間約140例の手術を行っていて、長期予後経過観察で90%以上の成功を収めている。
 供覧した症例1~4は特に成功例を選んだものではなく、ほとんどの患者さんがこのような良好な経過をたどる。症例4のような歯根の亀裂の治療は非常に困難で、再根管治療では治すことはできず歯根端切除術が適応です。また逆根管充填材として従来のアマルガム、EBAセメント、MTAセメントなどは亀裂に対して流し込めず細菌の培地を閉鎖することはできない。その点で安全性が高く、接着性に優れたスーパーボンド・ラジオペークが良いと考えている。
 マイクロミラー、手術用マイクロスコープ、超音波ダイヤモンドチップ、スーパーボンド・ラジオペーク、私の考案でこの手術のために開発したスーパーボンドクイックなど、器具や材料を駆使しての最新の歯根端切除術を行い、長期に経過観察することで予知性の高い治療が行えると確信しています。当科では歯根端切除術のプロトコールを作成して全症例の資料を残し、長期に経過観察を行っています。一人でも多くの患者さんの1本の歯を抜去することなく助けることができれば幸いです。


歯根端切除術の失敗で困っている方へ

失敗の原因のほとんどは逆根管充填の不備によるものです。従来のアマルガムやEBAセメントは細胞毒性が少なからずあったり、細菌の繁殖を防ぐための根管封鎖の点で劣り、炎症が生じて歯肉の腫脹や痛みが出現し予後不良になったと考えられます。また歯根切除のみで終わっている場合も同様です。
 治療としては、根尖が切断され逆根管充填窩洞が形成されているため、通常の根管治療や緊密な根管充填は行えず、そのため歯を助けるには残念ながら再手術を行うしかありません。再手術をしてアマルガムなどを除去し、マイクロミラーで根尖を確認して原因を究明、スーパーボンドを逆根充して細菌が繁殖しないように根管を完全に封鎖することで治癒へ向かいます(症例2参照)。
 ただし再手術で全ての歯を助けられるわけではありません。数%は歯の破折や歯根そのものが腐敗していて、再再発し抜歯になる場合もあります。インターネット検索で歯根端切除術の予後不良で苦しみ悩んでいる方が多いと知り、根管治療を行えない歯については、予知性の高い、予後の良い歯根端切除術を行えるよう努力していきたいと思っています。
 

歯科医師会、スタディーグループの先生へ

講演の御依頼があれば受け付けておりますので御連絡ください.講演時間は各約1.5~2時間です.
演者:立川病院 歯科口腔外科元部長 笠崎安則      
講演内容:
 1.手際のいい智歯の抜歯
 2.歯科トラブル症例への対応
 3.難治性根尖病変に対する予後の良い歯根端切除術
 4.開業歯科医院における口腔外科小手術について
 5.歯性上顎洞炎を考える
 6.顎変形症の治療
 7.顎骨骨髄炎の診断と治療
【1.手際のいい智歯の抜歯】
「手際のいい智歯の抜歯」 「智歯の抜歯ナビゲーション」(クインテッセンス出版)の著者であ  り、智歯抜歯においての X線写真撮影法や読影、抜歯テクニック、抜歯できなかったらどうするかなど詳細に解説します.
【2.歯科トラブル症例への対応】 
一般臨床におけるさまざまなトラブル、偶発症を症例をもとに検証し、予防法と対応法を解説します.
【3.難治性の根尖病変に対する予後の良い歯根端切除術】
抜髄後、いつまでも打診痛が残り根管充填できない.根管治療していて排膿や浸出液が多く根治・根充がうまくいかない.X線写真上では根管充填は良好なのに、fistel形成や歯肉腫張の出現、根尖病巣の残存.以上のようなエンド不良例を臨床医なら誰でも経験するものです.抜歯すればすみますが、一本の歯にこだわり、保存の限界を知ることも大切なことだと考えます.エンド不良例の原因を究明し、再根治できない不良例に対しては、外科的治療法として歯根端切除術、意図的再植術などがあり試みるべきでしょう.
 歯根端切除術においては、根尖を明示した後にマイクロミラーを挿入して写真撮影を行い、エンド不良の原因を究明する.根尖切除は1から2mmで十分であり、逆根充窩洞は超音波ダイヤモンドチップで形成し、スーパーボンド・ラジオペークで逆根充する.そしてX線写真で長期経過観察を行った結果、95%以上の成功率をおさめている.臨床的成功率を左右する問題点を挙げ、私の考える予後の良い術式を紹介したいと思います.
【4.開業歯科医院における口腔外科小手術について】
切開・縫合処置の基本手技、膿瘍切開、小帯切除術、骨隆起除去術、歯槽堤形成術、粘液嚢胞摘出術など日常臨床で行われる口腔外科小手術を解説します.
【5.歯性上顎洞炎を考える】
抜歯後、上顎洞に大きく穿孔してしまった、歯根を迷入させてしまった、根充材が上顎洞内に入って頬部に疼痛や腫張が生じてしまった、上顎臼歯の根治をしたところ、根管より多量の排膿がみられ、エンド不良になってしまった、など上顎洞と歯との関係を症例をもとに考察します.
【6.顎変形症の治療】
下顎前突症に代表される顎変形症の分析法、診断法、手術結果、予後など症例写真をもとに解説します.
【7.顎骨骨髄炎の診断と治療】
感染症の中で骨髄炎はやっかいな病気です.昔は顎骨の著明な腫張や排膿、熱発、X線写真による骨吸収を示す透過像など診断は容易でした.現在は抗菌剤の開発や歯牙保存治療法の進歩もあって、目で見える症状がないまま進行する硬化性骨髄炎がみられることがあります.原因は抜歯後感染、根尖病巣からの感染、糖尿病などの全身的疾患に関係するものなどです.エンド不良の1本の歯が原因で下顎骨骨髄炎になった症例に対し、症例から学ぶべきものは多いと考えます.症例を挙げX線写真の読影、診断法、治療法を解説します.
 

プロフィール

プロフィール画像
笠崎安則:略歴
愛媛県松山市出身.1976年東京歯科大学卒業.慶応大学病院歯科口腔外科(13年間). 立川病院歯科口腔外科部長(27年間). 慶応大学医学部歯科・口腔外科(非常勤講師). 現在: 国立スマイル歯科,斎藤歯科にて歯根端切除術と再植術に特化した専門治療をしています.
笠崎真悟:略歴
東京都国立市出身.2010年東京歯科大学卒業.慶応大学病院,国立栃木医療センター,日野市立病院,都立多摩北部医療センター歯科口腔外科. 現在:2021.10/1から国立スマイル歯科、歯根端切除術とインプラント、親知らずの専門病院を開設しました.

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