根管開放は必要か否か? マイクロリーケージ問題は本当か?
●根管開放(J-OPEN)は必要か否か?
<根管開放は急性炎症が強い場合の、重症化させない必要な処置です>
根尖病変に対する根管治療は、根管内を清掃し根尖まで穿通させた後に治療薬を入れて、薬剤が漏れたり唾液が入らないように仮封(蓋)をする。しかしまれに根尖病変の炎症が強くなって、著しい自発痛、根管から多量の排膿、歯肉膿瘍、骨膜炎などの急性症状が生じる場合があり、その際は根管を開放し根尖病変内部の圧力を下げて症状を軽減させ、早期の消炎をはかるとされている。炎症が収まれば通常の根管治療に移行し仮封を行う。口腔外科医で、急性期に仮封をし続けるDrは誰一人いないと思う。なぜならそうされて痛みで苦しみ重症化した患者さんを数多く治療した経験を持っているから。
しかし近年、歯内療法専門医の一部でたとえ急性期でも根管は緊密な仮封を行い、患者さんが激痛を訴えても我慢してもらい、根管開放(J−OPEN)してはならないと唱える人たちがネット上で多く見受けられるようになった。困ったものだ。
唾液が入って根管が汚染し根管治療の予後不良につながるからとのこと。しかし抜髄根管や慢性の感染根管ならまだしも、根尖病巣炎症の活発な急性期においては、唾液が入ることより膿やガスを排出することが優先すべきと思われる。唾液と根尖病変からの膿汁とを比べてどちらが汚染されているだろうか。根尖病変の治療病因論が確立されてなく、原因細菌感染が 根管内のみにあるとする根管内至上主義に陥っていると、このような間違った治療方針になってしまう。
急性期に仮封するということは、まるで火山が爆発し噴火状態に蓋をするようなもので著しく無理がある。根尖病変内の膿は繁殖して内圧は高まり激痛とな り、細菌感染は骨内、下顎管、上顎洞など広範囲に波及し、骨膜炎、骨髄炎、蜂窩織炎、急性副鼻腔炎を継発する可能性がある。実際、筆者勤務経験の口腔外科(慶応病院13年間・立川病院27年間)におい ては、開業歯科で根管治療中に急性症状を呈し、緊密な仮封のままに重症感染症となって、急患として激痛や顔面の腫脹を訴えて来院する患者さんは少なくなかった。
その際には仮封を除去し根管開放することで多量の排膿がみられ、内圧が下がることで急激に痛みなどの症状は緩和される。患者さんは涙を流して痛みが取れたことに感謝している。そして細菌検査と抗菌剤の点滴を行い消炎させてから通常の根管治療・仮封に移行する。しかし重症化していれば緊急入院となり治療は長引くこともある。急性期に緊密な仮封をしないで根管開放にしておけば重篤な感染症にならなかったのにと残念に思う症例は多い。根管開放は重症化させないで抜歯ではなく歯を残すのに役立つ必要な処置なのです。
同様の症例が「日常歯科臨床こんなときどうする(口腔外科編)」クインテッセンス出版<根尖性歯周炎からの継発症、上顎骨骨膜炎・鼻部皮下膿瘍>に発表されている。21歳女性で左上1.2番の根管治療中に急性症状がでて3か所の開業歯科医院を受診したが、いずれも緊密な仮封をされ顔面の激痛と腫脹著しく顔面蜂窩織炎となった。口腔外科を受診、症状著しいため緊急12日間入院して根管開放、膿瘍切開、抗菌剤の点滴治療を行い消炎した後、根管治療・根管充填し治癒した、と症例報告されている。
また<根管治療中に骨髄炎を継発した症例>38歳女性で、開業歯科で左下6番の根管治療をしていて痛みが強くなったがストッ ピングの仮封を毎回続けていた。しばらくすると左下顎全体の激痛と下唇とオトガイ部の知覚麻痺が出現したため大学病院口腔外科を紹介され受診。病院初診時にも仮封はされていた。レントゲンで下顎6番根尖部と下顎管に陰影を認め骨髄炎と診断された。入院し抗菌剤の点滴がされたが激痛と麻痺の範囲が拡大したため、原因6番歯は抜歯され消炎へと向かったとある。このような重症例はまれではあるが、急性期の仮封が行われていなければ抜歯や重症化、継発症は避けられたと思われる。
歯科大学、病院歯科、医科大学の口腔外科には、開業歯科や歯内療法専門医で急性炎症期に仮封され激痛になったり、仮封を続けたために重症化した患者さんを数多く経験し治療していると思う。口腔外科医にとって根管開放は当たり前の適切な処置であり、歯内療法専門医はその必要性を口腔外科研修で認識して欲しいと願っている。病院口腔外科医は歯科医師会やスタディーグループでの講演会で、根管治療での急性期仮封はこんなに重症化すると症例発表して啓発し、そのギャップを埋めた方が良いと思われる。
医科では腹膜炎、脳髄膜炎などの急性期はドレーンチューブで膿汁や内ガスの排泄路を作り、切開・排膿・ドレナージという手技は病態を重症化させず早期に 軽減させるのに重要とされている。根尖病変の急性期においてもしかりで、根尖を穿通し根管を通じて減圧を図り排膿・ドレナージすることが重要である。また、根管開放の時期としては約1週間をめどに行い、仮封をすると急性症状を繰り返す場合には嚢胞摘出術、歯根端切除術に踏み切ることも大切である。
結論:根管開放は必要な治療である。抜髄根管や慢性の感染根管における仮封は、唾液を根管内に入れないためには重要な処置であることは言うまでもない。そ して長期間の根管開放は根管象牙質の汚染につながるため避けねばならない。ブログは根管開放を勧めている訳ではない。しかし根管治療中に急性症状が出た場合、短期の根管開放は必要な治療であり、これが後々の根管治療不良の原因になることはない。もし不良となるならば根管開放が原因ではなく、根尖孔が開いてない、根尖破壊、大きい歯根嚢胞など別の原因である。そして根管開放を繰り返しても症状が収まらない場合は、根管内の炎症ではなくて根管外(嚢胞)の炎症が著しいためであり、根管治療でなく歯根端切除術が適応となります。
急性の症状著しい時は仮封は適さない。根管治療不良の原因を根管開放のせいにして患者さんを不安がらせてはならない。痛みを取ることは医療の根源的な部分であり、急性期に緊密な仮封を強いることは患者さんに苦痛を与えるだけでなく、治療として不適切で重症化させかねないことを知ってほしいものです。根管治療中に激痛や頬部腫脹など急性症状が出現した場合でも根管内に唾液を入れないように仮封をしておくというウソ情報が広まらないことを願っています。kasazaki 2014.8.19「桜島の噴火」に蓋をするようなものです。
1.根尖病変の急性炎症が起きて痛みがあるが、蓋(仮封)をする理由:痛みがあっても蓋をしないと根管内に唾液が入り、今後の根管治療が不良になると思っているから。根管治療中はどんなに痛みがあろうとも唾液を入れたくない。感染根管の細菌よりも唾液の方が細菌が多いと考えているから。
2.急性炎症が起きて痛みがある場合、蓋をしないで根管開放にする理由:急性炎症とは根尖病巣内で急激な細菌繁殖が起きて膿汁やガスが多量に産生されている状態であり、蓋をして内圧が高まれば激痛となり、歯槽骨炎・骨膜炎・骨髄炎に移行する場合がある。抜歯すれば内圧は取れ急激に治癒へ向かうが、根管開放することで重症化を防ぎ、歯を残すための処置である。
急性炎症がある場合、根管開放をした場合のリスクと、仮封をした場合のリスクを当該歯の病態を診断して担当医が判断する。どちらの方法がいいかの結論は経過が良いことで決まる。
根管開放は古くからある、急性炎症を早期に改善する適切な治療法である。目的は早く痛みを除去し歯を残すための処置である。医科ではドレナージと呼ばれ急性炎症で膿汁やガスの産生が著しい場合には、患部にチューブを入れて早期に内圧を取り炎症を鎮めることは良くあること。
•歯科医師として根管治療を行う上で留意し、病態によって治療の引き出しを多く持つことが必要である。何でもかんでも根管開放にする、何でもかんでも仮封にするのではなく病態を診て経過を診て行う。
1.抜髄根管
2.慢性炎症の感染根管
3.急性炎症を起こしている感染根管
4.歯根膜炎を起こしている根管
●歯根端切除術の再発原因はマイクロリーケージのせい? ウソホント
「歯根端切除術は、根管充填が良好でも必ず再根管治療をしてから行わなければいけない。理由として歯冠側の補綴物辺縁漏洩からマイクロリーケージが起きて細菌が侵入し、コアや根管充填材の隙間を通って、さらに逆根管充填材を通って根尖外に達し感染して再発する可能性があるから」という意見が歯内療法専門医の中で多くを占めていると聞く。そのため他院で良好な根管充填がされていても信用せず、冠とコアを除去し再根管治療・再根管充填を行ったうえで再歯根端切除術をするとのこと。この話は本当だろうか?ウソホント?ウソでしょう。
根管充填が不良であれば再根管治療の必要性は分かるが、限りなく0に近い再発確率の奇想天外な発想に驚いてしまった。20年以上前ならまだしも、現在は接着性レジンセメントで補綴物合着や根管充填、逆根管充填などが行われており、補綴物マイクロリーケージを手術再発の原因にするのは、論理的に苦しく無理があると思う。
あるとするならマイクロリーケージではなく「根管壁に感染象牙質が残っていて、その感染が逆根管充填が不良なため漏洩し再発した」のが事実で、それを補綴物マイクロリーケージのせいにするのは勘違いではないだろうか?(2020.7.接着性根管充填材メタシールSoftペースト、がサンメヂィカル社から発売された。今後はマイクロリーケージが根尖病変の原因とする議論はされなくなるだろう。筆者がこの開発に少し関係している)
レントゲンで根管充填が良好であれば、再根管治療する必要はなく、適応症であれば歯根端切除術は成功するだろう。根管至上主義に陥っていると治らない原因を全て根管のせいにして、根尖病変の原因と治療法(根管以外の感染源に対する処置)が見えなくなってしまうので注意が必要です。私は補綴物マイクロリー ケージが原因で歯根端切除術が再発したという経験をしたことはないが、あれば症例報告を見てみたい。
サイドメニューで筆者の治療症例を見て欲しい。再根管治療することなく手術を行い長期経過観察で完治している。歯根端切除術も進歩していて、現在 逆根管は最大深さ9mm超音波レトロチップで形成して逆根管充填が可能です。根管内が腐敗したままで臭いものに蓋をする術式ではないので、術前に必ず再根管治療をしてから歯根端切除術をしなければいけないという時代ではなくなっている。kasazaki 2018.5.4.
<マイクロリーケージ問題は解決する>
接着性根管充填材・メタシールSoftペーストが2020.7.発売された。約6年前に歯根亀裂と根管内感染(マイクロリーケージ)の防止のために、サンメディカル社に開発を要望していたものがやっと完成した。これによってマイクロリーケージ問題は解決した。
●急性期の根管充填は避ける。非定型歯痛を疑う場合は根管充填前に紹介すべき。
Q.強い痛みがあったが根管充填され、痛みはさらに強くなり困っている。どうしたらいいですか?
A.最近このような根管充填後に強い痛みが取れず、困ってメール相談や来院される患者さんを度々経験している。特にマイクロスコープを使って自費で根管治療を行い、短期間で終了させることに主眼をおいている歯内療法専門医の治療に起きている。1回の根管治療をして2回目に根管充填を基本としているようだが、自発痛や強い打診痛がある急性期の根管充填は避けねばならない。根管内がきれいだからと強い痛みを無視して根管充填をすれば、痛みは消えず激痛となって患者さんを苦しめることになる。この痛みの原因は急性歯根膜炎を起こしている可能性が高い。
根管充填後に痛みが取れない場合の流れは、非定型歯痛を疑い口腔顔面痛専門医へ紹介するようだが、診断で非定型歯痛は否定され元の紹介医へ返されることが多い。
自発痛や強い打診痛があれば根管充填はしてはいけない。非歯原性疼痛の可能性があれば、治療前か根管充填前に専門医に紹介するのがいいです。2020.11.21.
一般的に根管治療において自発痛や強い打診痛があれば、ので、根管充填してはいけないとされている。
<根管開放は急性炎症が強い場合の、重症化させない必要な処置です>
根尖病変に対する根管治療は、根管内を清掃し根尖まで穿通させた後に治療薬を入れて、薬剤が漏れたり唾液が入らないように仮封(蓋)をする。しかしまれに根尖病変の炎症が強くなって、著しい自発痛、根管から多量の排膿、歯肉膿瘍、骨膜炎などの急性症状が生じる場合があり、その際は根管を開放し根尖病変内部の圧力を下げて症状を軽減させ、早期の消炎をはかるとされている。炎症が収まれば通常の根管治療に移行し仮封を行う。口腔外科医で、急性期に仮封をし続けるDrは誰一人いないと思う。なぜならそうされて痛みで苦しみ重症化した患者さんを数多く治療した経験を持っているから。
しかし近年、歯内療法専門医の一部でたとえ急性期でも根管は緊密な仮封を行い、患者さんが激痛を訴えても我慢してもらい、根管開放(J−OPEN)してはならないと唱える人たちがネット上で多く見受けられるようになった。困ったものだ。
唾液が入って根管が汚染し根管治療の予後不良につながるからとのこと。しかし抜髄根管や慢性の感染根管ならまだしも、根尖病巣炎症の活発な急性期においては、唾液が入ることより膿やガスを排出することが優先すべきと思われる。唾液と根尖病変からの膿汁とを比べてどちらが汚染されているだろうか。根尖病変の治療病因論が確立されてなく、原因細菌感染が 根管内のみにあるとする根管内至上主義に陥っていると、このような間違った治療方針になってしまう。
急性期に仮封するということは、まるで火山が爆発し噴火状態に蓋をするようなもので著しく無理がある。根尖病変内の膿は繁殖して内圧は高まり激痛とな り、細菌感染は骨内、下顎管、上顎洞など広範囲に波及し、骨膜炎、骨髄炎、蜂窩織炎、急性副鼻腔炎を継発する可能性がある。実際、筆者勤務経験の口腔外科(慶応病院13年間・立川病院27年間)におい ては、開業歯科で根管治療中に急性症状を呈し、緊密な仮封のままに重症感染症となって、急患として激痛や顔面の腫脹を訴えて来院する患者さんは少なくなかった。
その際には仮封を除去し根管開放することで多量の排膿がみられ、内圧が下がることで急激に痛みなどの症状は緩和される。患者さんは涙を流して痛みが取れたことに感謝している。そして細菌検査と抗菌剤の点滴を行い消炎させてから通常の根管治療・仮封に移行する。しかし重症化していれば緊急入院となり治療は長引くこともある。急性期に緊密な仮封をしないで根管開放にしておけば重篤な感染症にならなかったのにと残念に思う症例は多い。根管開放は重症化させないで抜歯ではなく歯を残すのに役立つ必要な処置なのです。
同様の症例が「日常歯科臨床こんなときどうする(口腔外科編)」クインテッセンス出版<根尖性歯周炎からの継発症、上顎骨骨膜炎・鼻部皮下膿瘍>に発表されている。21歳女性で左上1.2番の根管治療中に急性症状がでて3か所の開業歯科医院を受診したが、いずれも緊密な仮封をされ顔面の激痛と腫脹著しく顔面蜂窩織炎となった。口腔外科を受診、症状著しいため緊急12日間入院して根管開放、膿瘍切開、抗菌剤の点滴治療を行い消炎した後、根管治療・根管充填し治癒した、と症例報告されている。
また<根管治療中に骨髄炎を継発した症例>38歳女性で、開業歯科で左下6番の根管治療をしていて痛みが強くなったがストッ ピングの仮封を毎回続けていた。しばらくすると左下顎全体の激痛と下唇とオトガイ部の知覚麻痺が出現したため大学病院口腔外科を紹介され受診。病院初診時にも仮封はされていた。レントゲンで下顎6番根尖部と下顎管に陰影を認め骨髄炎と診断された。入院し抗菌剤の点滴がされたが激痛と麻痺の範囲が拡大したため、原因6番歯は抜歯され消炎へと向かったとある。このような重症例はまれではあるが、急性期の仮封が行われていなければ抜歯や重症化、継発症は避けられたと思われる。
歯科大学、病院歯科、医科大学の口腔外科には、開業歯科や歯内療法専門医で急性炎症期に仮封され激痛になったり、仮封を続けたために重症化した患者さんを数多く経験し治療していると思う。口腔外科医にとって根管開放は当たり前の適切な処置であり、歯内療法専門医はその必要性を口腔外科研修で認識して欲しいと願っている。病院口腔外科医は歯科医師会やスタディーグループでの講演会で、根管治療での急性期仮封はこんなに重症化すると症例発表して啓発し、そのギャップを埋めた方が良いと思われる。
医科では腹膜炎、脳髄膜炎などの急性期はドレーンチューブで膿汁や内ガスの排泄路を作り、切開・排膿・ドレナージという手技は病態を重症化させず早期に 軽減させるのに重要とされている。根尖病変の急性期においてもしかりで、根尖を穿通し根管を通じて減圧を図り排膿・ドレナージすることが重要である。また、根管開放の時期としては約1週間をめどに行い、仮封をすると急性症状を繰り返す場合には嚢胞摘出術、歯根端切除術に踏み切ることも大切である。
結論:根管開放は必要な治療である。抜髄根管や慢性の感染根管における仮封は、唾液を根管内に入れないためには重要な処置であることは言うまでもない。そ して長期間の根管開放は根管象牙質の汚染につながるため避けねばならない。ブログは根管開放を勧めている訳ではない。しかし根管治療中に急性症状が出た場合、短期の根管開放は必要な治療であり、これが後々の根管治療不良の原因になることはない。もし不良となるならば根管開放が原因ではなく、根尖孔が開いてない、根尖破壊、大きい歯根嚢胞など別の原因である。そして根管開放を繰り返しても症状が収まらない場合は、根管内の炎症ではなくて根管外(嚢胞)の炎症が著しいためであり、根管治療でなく歯根端切除術が適応となります。
急性の症状著しい時は仮封は適さない。根管治療不良の原因を根管開放のせいにして患者さんを不安がらせてはならない。痛みを取ることは医療の根源的な部分であり、急性期に緊密な仮封を強いることは患者さんに苦痛を与えるだけでなく、治療として不適切で重症化させかねないことを知ってほしいものです。根管治療中に激痛や頬部腫脹など急性症状が出現した場合でも根管内に唾液を入れないように仮封をしておくというウソ情報が広まらないことを願っています。kasazaki 2014.8.19「桜島の噴火」に蓋をするようなものです。
1.根尖病変の急性炎症が起きて痛みがあるが、蓋(仮封)をする理由:痛みがあっても蓋をしないと根管内に唾液が入り、今後の根管治療が不良になると思っているから。根管治療中はどんなに痛みがあろうとも唾液を入れたくない。感染根管の細菌よりも唾液の方が細菌が多いと考えているから。
2.急性炎症が起きて痛みがある場合、蓋をしないで根管開放にする理由:急性炎症とは根尖病巣内で急激な細菌繁殖が起きて膿汁やガスが多量に産生されている状態であり、蓋をして内圧が高まれば激痛となり、歯槽骨炎・骨膜炎・骨髄炎に移行する場合がある。抜歯すれば内圧は取れ急激に治癒へ向かうが、根管開放することで重症化を防ぎ、歯を残すための処置である。
急性炎症がある場合、根管開放をした場合のリスクと、仮封をした場合のリスクを当該歯の病態を診断して担当医が判断する。どちらの方法がいいかの結論は経過が良いことで決まる。
根管開放は古くからある、急性炎症を早期に改善する適切な治療法である。目的は早く痛みを除去し歯を残すための処置である。医科ではドレナージと呼ばれ急性炎症で膿汁やガスの産生が著しい場合には、患部にチューブを入れて早期に内圧を取り炎症を鎮めることは良くあること。
•歯科医師として根管治療を行う上で留意し、病態によって治療の引き出しを多く持つことが必要である。何でもかんでも根管開放にする、何でもかんでも仮封にするのではなく病態を診て経過を診て行う。
1.抜髄根管
2.慢性炎症の感染根管
3.急性炎症を起こしている感染根管
4.歯根膜炎を起こしている根管
●歯根端切除術の再発原因はマイクロリーケージのせい? ウソホント
「歯根端切除術は、根管充填が良好でも必ず再根管治療をしてから行わなければいけない。理由として歯冠側の補綴物辺縁漏洩からマイクロリーケージが起きて細菌が侵入し、コアや根管充填材の隙間を通って、さらに逆根管充填材を通って根尖外に達し感染して再発する可能性があるから」という意見が歯内療法専門医の中で多くを占めていると聞く。そのため他院で良好な根管充填がされていても信用せず、冠とコアを除去し再根管治療・再根管充填を行ったうえで再歯根端切除術をするとのこと。この話は本当だろうか?ウソホント?ウソでしょう。
根管充填が不良であれば再根管治療の必要性は分かるが、限りなく0に近い再発確率の奇想天外な発想に驚いてしまった。20年以上前ならまだしも、現在は接着性レジンセメントで補綴物合着や根管充填、逆根管充填などが行われており、補綴物マイクロリーケージを手術再発の原因にするのは、論理的に苦しく無理があると思う。
あるとするならマイクロリーケージではなく「根管壁に感染象牙質が残っていて、その感染が逆根管充填が不良なため漏洩し再発した」のが事実で、それを補綴物マイクロリーケージのせいにするのは勘違いではないだろうか?(2020.7.接着性根管充填材メタシールSoftペースト、がサンメヂィカル社から発売された。今後はマイクロリーケージが根尖病変の原因とする議論はされなくなるだろう。筆者がこの開発に少し関係している)
レントゲンで根管充填が良好であれば、再根管治療する必要はなく、適応症であれば歯根端切除術は成功するだろう。根管至上主義に陥っていると治らない原因を全て根管のせいにして、根尖病変の原因と治療法(根管以外の感染源に対する処置)が見えなくなってしまうので注意が必要です。私は補綴物マイクロリー ケージが原因で歯根端切除術が再発したという経験をしたことはないが、あれば症例報告を見てみたい。
サイドメニューで筆者の治療症例を見て欲しい。再根管治療することなく手術を行い長期経過観察で完治している。歯根端切除術も進歩していて、現在 逆根管は最大深さ9mm超音波レトロチップで形成して逆根管充填が可能です。根管内が腐敗したままで臭いものに蓋をする術式ではないので、術前に必ず再根管治療をしてから歯根端切除術をしなければいけないという時代ではなくなっている。kasazaki 2018.5.4.
<マイクロリーケージ問題は解決する>
接着性根管充填材・メタシールSoftペーストが2020.7.発売された。約6年前に歯根亀裂と根管内感染(マイクロリーケージ)の防止のために、サンメディカル社に開発を要望していたものがやっと完成した。これによってマイクロリーケージ問題は解決した。
●急性期の根管充填は避ける。非定型歯痛を疑う場合は根管充填前に紹介すべき。
A.最近このような根管充填後に強い痛みが取れず、困ってメール相談や来院される患者さんを度々経験している。特にマイクロスコープを使って自費で根管治療を行い、短期間で終了させることに主眼をおいている歯内療法専門医の治療に起きている。1回の根管治療をして2回目に根管充填を基本としているようだが、自発痛や強い打診痛がある急性期の根管充填は避けねばならない。根管内がきれいだからと強い痛みを無視して根管充填をすれば、痛みは消えず激痛となって患者さんを苦しめることになる。この痛みの原因は急性歯根膜炎を起こしている可能性が高い。
根管充填後に痛みが取れない場合の流れは、非定型歯痛を疑い口腔顔面痛専門医へ紹介するようだが、診断で非定型歯痛は否定され元の紹介医へ返されることが多い。
自発痛や強い打診痛があれば根管充填はしてはいけない。非歯原性疼痛の可能性があれば、治療前か根管充填前に専門医に紹介するのがいいです。2020.11.21.
一般的に根管治療において自発痛や強い打診痛があれば、ので、根管充填してはいけないとされている。
痛みが強いのに根管充填するのは無謀です。治療後に長期経過を追っていれば、痛みが続く強引な根管充填は駄目だと分かるはずなのだが、なぜだろう。その後も痛みが取れないため抜歯を宣告されたり、うずく痛みで非定型歯痛専門医へ紹介したり、歯槽骨炎になって病院口腔外科受診したりしている。もし非歯原性疼痛の疑いがあれば、根管充填をする前に疼痛専門医へ紹介するのがいいです。紹介した1件目の疼痛専門医で非定型歯痛を否定された場合、2.3件目と紹介するようだが困ったものです。
根管至上主義に陥ることなく、根管内だけを診るのではなく、根管外の歯根膜炎にも目を向け注意を払って、優しい根管治療をして欲しいものです。歯内療法学会は、この治療方針を推奨しているのだろうか。今や大きな問題となっています。自発痛や強い打診痛があれば根管充填はしてはいけない。非歯原性疼痛の可能性があれば、治療前か根管充填前に専門医に紹介すべき。2020.11.21.
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プロフィール

- 笠崎安則:略歴
- 愛媛県松山市出身.1976年東京歯科大学卒業.慶応大学病院歯科口腔外科(13年間). 立川病院歯科口腔外科部長(27年間). 慶応大学医学部歯科・口腔外科(非常勤講師). 現在: 国立スマイル歯科,斎藤歯科にて歯根端切除術と再植術に特化した専門治療をしています.
- 笠崎真悟:略歴
- 東京都国立市出身.2010年東京歯科大学卒業.慶応大学病院,国立栃木医療センター,日野市立病院,都立多摩北部医療センター歯科口腔外科. 現在:2021.10/1から国立スマイル歯科、歯根端切除術とインプラント、親知らずの専門病院を開設しました.
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